(灯 わたしのよりどころ)誰もが孤独の時代、人間性失わないで ノーベル賞作家・アレクシエービッチさん
皇室、ネット発信強化へ 活動内容手厚く、「中傷」減らす狙い HP刷新検討
朝日賞、4氏に決まる
(天声人語)いろは歌
昨日までと同じように空が明けてゆくのに、何かが違う。元日の朝の不思議である。天気予報によれば、九州から関東にかけては初日の出を拝めたはずだが、さていかがであったろう。手をあわせて思いを新たにする。この五七調にも、そんな気持ちがにじんでいる▼〈鳥啼(な)く声(こゑ)す夢覚ませ/見よ明けわたる東(ひんがし)を/空色映えて沖つ辺(べ)に/帆船(ほぶね)むれゐぬ靄(もや)のうち〉。明治時代につくられた「いろは歌」である。いろはの47文字に「ん」を足して、すべてを一度だけ使うことば遊びだ。旧仮名遣いで、濁点は問わない▼当時の新聞が募り、1万を超える投稿から1位に選ばれたそうだ。〈色は匂へど〉の組み合わせ以外に、こんな芸当が出来るとは。一つ考えるだけでも苦悶(くもん)しそうだが、世の中、上には上がいるものだ▼兵庫県尼崎市の中村菜花群(なかむら)さん(59)は2017年の秋以降、ほぼ毎日いろは歌を詠んでいる。去年1月の作品だ。〈黒豆蓮根(はすね)/海老(えび)昆布/青菜(あをな)添へけり/さて御節(おせち)/太陽(たいやう)燃ゆる/良き年に/笑顔(ゑがほ)の我ら/睦(むつ)みゐぬ〉。いやはや、よくぞ。重箱の具材も盛り込み、見事というほかない▼コツはあるのか。中村さんによれば、「て」や「に」は助詞にもなれて、どこにもあてはまる優等生だそうだ。一方で「ろ」は使い道が限られる個性派だとか▼要は、それぞれの居場所を見いだす、ということなのだろう。すると一つの情景が生まれる。おや、新年の祝い酒が早くもまわったか。何だか人間世界のお話のように思えてきた。
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