将棋の第77期順位戦C級1組の最終局が5日、東京と大阪の将棋会館で一斉に行われた。史上最年少棋士・藤井聡太七段(16)は都成竜馬五段(29)を126手で破り、9勝1敗で今期を終えたが、1敗で並んでいた上位棋士3人がすべて勝ったため、順位の差で2期連続の昇級はならなかった。B級2組には、師匠・杉本昌隆八段(50)と近藤誠也五段(22)が昇級。ともに勝ちながら師弟は明暗を分けた。藤井は「仕方がない。来期も一局一局、(白星を)積み重ねていきたい」と先を見据えた。
込み上げるものをグッとこらえる顔だった。B級2組へ4期ぶりの昇級を決めた杉本八段は「失ったものを取り返すための戦いでした。諦めかけた時期もありましたけど、諦めなければ結果を出せることを証明できた」と声を震わせた。
前夜は2時間しか眠れなかったというが、今期の竜王戦3組優勝者・千葉七段を相手に得意の振り飛車で臨み、終盤は大胆な角切りから鮮やかに寄せた。「自然体で、前に出る将棋を指せました」
若者が上がり、ベテランが落ちるのが常の順位戦だが、50歳以上で昇級したのは17人目。21世紀2人目の棋士となった。50歳でのB級2組への昇級は史上4位の年長記録。「50歳の誕生日(昨年11月)はうれしくなかったですけど、注目していただけたことが良かったのかな、と」
弟子が昇級を逸したことを伝え聞くと「(同級に)藤井がいたから昇級争いできた。一緒に昇級するのが夢でしたので、自分だけ上がって申し訳ない気もします。棋士としては最高の気持ち。師匠としては複雑な思いです」。どこまでも弟子思いの50歳は「『一足先に上がったけど、B級2組で昇級争いをしたいので、待ってる』と言いたいです」と若々しい声で言った。
◆杉本 昌隆(すぎもと・まさたか)1968年11月13日、愛知県名古屋市生まれ。50歳。故・板谷進九段門下。80年、奨励会入会。90年、四段昇段。2001年度の朝日オープンで準優勝。順位戦での過去最高位は07年から4期在籍したB級1組。先月22日に「七段昇段後の公式戦190勝」の規定を満たして八段に昇段した。弟子は、藤井の他に室田伊緒女流二段、中澤沙耶女流初段がいる。振り飛車党。