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この項目では、「ミュージアム」の本義について説明しています。その他の用法については「ミュージアム」をご覧ください。 |
博物館(はくぶつかん)とは、特定の分野に対して価値のある事物、学術資料、美術品等を購入・寄託・寄贈などの手段で収集、保存し、それらについて専属の職員(学芸員、キュレーターなど)が研究すると同時に、来訪者に展示の形で開示している施設である[1]。 ミュージアム(英: museum、英語発音: [mjuːˈziːəm] ミューズィーァム)と英語風に呼ぶこともある。
多くは自然史・歴史・民族・美術・科学・技術・交通・海事・航空・軍事・平和など、ある分野を中心に構成され、収集された資料に基づく研究成果を公刊すると同時に、来訪者がその分野について幅広く知識を吸収できるように工夫されている。
英語のミュージアムは古代エジプト、プトレマイオス朝の首都アレクサンドリアにあった総合学術機関であるムーセイオンに由来する。ムーセイオンは、ギリシア語で「ムーサ(ミューズ:芸術や学問をつかさどる9人の女神たち)の殿堂」を意味する。この名のとおり欧州語の museum は、日本語でいう美術館(アート・ミュージアム)も内包する概念であり、同様に日本語で博物館という名称を付さない記念館、資料館、文学館、歴史館、科学館などの施設も、世界標準では博物館の概念に含まれる、専門博物館の類型である。水族館、動物園、植物園といった生きている生物を収集する施設の場合は、植物園の標本館であるハーバリウム施設を除くと博物館とは分けて考えられる傾向にあるが[2]、同一の発想に基づく類似施設である。なお、これらは博物館法上は「生態園」と呼称されている。
世界の博物館[編集]
ヨーロッパの博物館・美術館にはバロック期のヴンダーカンマー(驚異の部屋)に発祥するものが多い。ヴンダーカンマーとは、世界中の珍しい事物(異国の工芸品や一角鯨の角、珍しい貝殻、等々)を、種類や分野を問わず一部屋に集めたものである[3]。ルネサンス期からバロック期にかけて王侯や富裕な市民は珍しいものの収集に熱を入れた。この「珍しい」収集の中には貴重な絵画彫刻も含まれた。教会以外の場で大規模な美術品の公開展示が行われたのはルネサンス期のフィレンツェである。メディチ家のコレクションが邸内の回廊(ガレリア)で行われた。祝祭日に王侯がコレクションを閲覧することはその後も各地で行われたが、通年公開されることはなかった。フランスでは王立絵画彫刻アカデミーがルーヴル宮殿の一室「サロン・カレ」で会員の作品を行い[4]、ディドロが書いたその批評はフランス内外で広く読まれた。
それまで博物館の閲覧は学者を含め富裕層に限定されてきたが、フランス革命を契機として、はじめて一般に公開された常設の博物館として「国立自然史博物館」がパリに設置された。
1925年、ミュンヘンにオープンしたドイツ博物館は、これまでの閲覧中心の展示から、体験型展示を全面的に導入し、現代の科学博物館の展示様式のさきがけとなった。一部の博物館、特にイタリアには、コレクションの性質や規模に応じて紹介、事前予約を要するものがある。
アメリカ合衆国では博物館の教育性、公共性が強調され、公開のものが多く、スミソニアン博物館のように定額の入場料を定めないところもある。
日本の博物館[編集]
博物館のようにさまざまな物品を展示する施設としては、近代以前から社寺の宝物殿や絵馬殿があった。また江戸時代には本草家たちが博覧会のようなことも行っていた[5]。文久元年(1861年)の江戸幕府による遣欧使節に随行した市川清流は、その日録にBritish Museum に対し「博物館」という訳語を初めて与えた。この文久2年4月24日(1862年5月22日)の記事が日本語による「博物館」の嚆矢であると考えられる[6]。ウィーン万国博覧会への出品準備として1872年(明治5年)に開かれた湯島聖堂博覧会(文部省博物館)の出品物をもとに、翌年には太政官府に移管され、内務省管轄の博物館となるものの、明治8年に文部省所管の東京博物館に改称され、明治10年にはこれを上野公園内に移転して教育博物館とした。この教育博物館は現在の国立科学博物館である。なお、東京国立博物館は東京博物館を源流としつつも、それとは別に美術品展示を中心とする博物館として同じく上野公園内に設立されたもので、その建物はイギリス人のコンドルの設計によるものとして知られる。
資料館、美術館、文学館、歴史館、科学館、水族館、動物園、植物園などの施設は日本語では博物館の名を持たないが、いずれも世界標準からは博物館そのもの、あるいは博物館に準じる施設(生きている生物を主に扱う施設の場合)であり、後述する日本の法制上でも、条件を満たして登録措置を受ければ、博物館法上の博物館、あるいはそれに準じた博物館相当施設として扱われる。こうした法制上の扱いを度外視し、名称上博物館を名乗らないが実質的に博物館そのものである施設を数え上げれば、3000から4000の博物館が日本に存在するといわれる。
近年では、マンガ・アニメミュージアムが全国に続々オープンし、現時点で60施設ほど存在しているとされる。
博物館の法制度[編集]
日本には博物館に関する法令として博物館法がある。
同法第2条による定義では、博物館とはおおむね「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関」であって、公民館・図書館を除くもののことである。
しかし、同条はさらに同法上の博物館を、地方公共団体、一般財団法人、一般社団法人、宗教法人、日本赤十字社または日本放送協会が設置するものであって、なおかつ「第二章の規定による登録を受けたもの」に限っている。このように、博物館法が規定する博物館の範囲が限定的であるため、日本における「博物館」は法制度上、博物館法上の博物館である「登録博物館」、それに準じた法制上の扱いを受ける「博物館相当施設」、博物館法の適用外となる「博物館類似施設」の3つに分かれてしまう。
- 登録博物館
- 地方公共団体、一般財団法人、一般社団法人、宗教法人、日本赤十字社または日本放送協会が設置した施設で、都道府県教育委員会の審査を受けたもの。独立行政法人立の国立博物館等は登録博物館になれない(なお、2006年現在は国立の博物館らも独法化された)。資料の整備、館長・学芸員・職員の確保、土地・建物の確保、年間150日以上の開館などが定められている。手続きが非常に煩雑なため、要件を満たしていても登録しない博物館も多い。また公立の登録博物館は管轄が教育委員会になるので、行政が教育や観光事業などと連携して運営したい場合、登録しない場合がある。
- 登録博物館になるメリットとしては、資料を登録博物館に寄付すると、寄付者が税制上の優遇措置が受けることができる取り決めのために寄付をされやすいことや、不動産取得税・固定資産税・都市計画税などが優遇されることなどがある。また公立の登録博物館は補助金を受けることができる。事業に参加したり助成制度を受けたりする条件として、登録博物館であることが挙げられていることがある。
- 博物館相当施設
- 登録博物館の要件は満たしていないものの、一定の要件を満たしている施設で、文部科学大臣あるいは都道府県教育委員会の指定を受けたもの。事業に参加したり助成制度を受けたりする条件として、博物館相当施設であることが挙げられていることがある。
- 博物館類似施設
- 2施設以外で博物館法に定められた博物館と同種の事業を行う施設。つまり博物館法の適用外の施設である。ほとんどの博物館はこの博物館類似施設である。
世界の著名な博物館[編集]
詳細は「博物館の一覧」および「美術館の一覧」を参照
- イギリス
- イタリア
- オーストリア
- ポーランド
- オランダ
- スペイン
- ドイツ
- フランス
- ロシア連邦
- アメリカ合衆国
中南米[編集]
アフリカ[編集]
- エジプト
アジア[編集]
- 日本
- 韓国{大韓民国)
- 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)
- 台湾(中華民国)
- 中国(中華人民共和国)
- 満州(中国東北部)
- 香港(中国自治区)
- マカオ(中国自治区)
- チベット(中国自治区)
- 東トルキスタン(中国自治区)
- モンゴル
オセアニア[編集]
- ニュージーランド
カテゴリー一覧[編集]
様々な分類法があり、これらは一例である。
展示内容による分類[編集]
- 人文科学系博物館
- 美術館(美術系博物館)
- 歴史系博物館
- 歴史博物館
- 考古学博物館
- 民俗博物館
- 民族博物館
- マンガ・アニメーションミュージアム
博物館で展示される資料は大きく人文科学系の物と自然科学系の物に分類できる。そして、そのどちらを主要な物として収集しているかによって、博物館の分類も人文科学系と自然科学系に別けられる。
人文科学系の物では、歴史系博物館と美術館に別けられる。歴史系博物館は歴史博物館、考古学博物館、民俗博物館、民族博物館等が含まれる。美術館は現代以前の美術品を扱う古美術館と現代の美術品を扱う現代美術館に別けられる。
自然科学系の物では、自然史博物館、科学技術博物館、産業博物館、生態園に別けられる。生態園は生物資料を展示保管する物で、動物園、植物園、水族園等が含まれる。なお、自然史博物館と生態園とをまとめ、科学技術博物館と産業博物館とをまとめて、それぞれ自然史系博物館、理工系博物館と言うことがある。
総合博物館は人文科学と自然科学の双方の資料を扱う博物館であるが、ただ並列的に二つの分野を扱うと言う事ではなく、総合学として学際的に双方の分野に渡って扱う物である。
専門博物館は、扱う資料を特定のジャンルに絞った物である。
展示保管場所による分類[編集]
資料を展示保管する場所による分類で、屋内で資料を展示保管するもの、巨大な資料を屋外で展示保管するもの、建物など自体が展示物であるもの(野外博物館)がある。建物自体が展示物であるものには、遺跡をそのまま保存し展示しているものと、各地から移築して展示保管しているものがある。
機能による分類[編集]
- 全機能型
- 保存機能重視型
- 教育機能重視型
- 研究機能重視型
- レクリエーション機能重視型
博物館のどの機能を重視するかによる分類である。
対象地による分類[編集]
特定の地域のみの資料を扱うものと地域を越えて資料を扱うものがある。
博物館の展示環境[編集]
博物館においては保存科学の観点から展示室や収蔵庫において収蔵品に影響を与えうる温度や湿度、光、空気質、振動、害虫等の生物被害などの諸要素に関して考慮した収蔵・展示環境づくりが行われる。
展示室の温度は一般に空調を利用して20℃前後に保たれ、四季を通じての外気温との温度差を低く保つことを理想とする。温度と相関して湿度も重要な要素で、結露は金属製品に錆を生じさせ、急激な温度・湿度変化は日本画などに破損を生じさせる原因となる。光は紫外線が顔料や染料の退色を生じさせ、有機質を劣化させる要因であるが鑑賞者の便宜のためには展示照明が必要であり、紫外線や赤外線をカットした蛍光灯などが用いられ、光の強さも考慮される。
空気質は大気中の汚染物質が入り込まないよう換気や空調を用いたり、出入り口の二重化など施設面でも対策が行われる。また、施設内部においてもホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)など建材や展示ケースに用いる接着剤などから汚染物質が発生し、入館者を通じても靴底の土や髪の毛・皮膚など害虫の餌となる有機物が持ち込まれるため、換気や清掃が徹底される。
生物被害はネズミなど小動物による被害をはじめ昆虫類による被害、カビなど微生物による被害がある。害虫による被害はゴキブリ、シミ、タバコシバンムシ、カツオブシムシ、ヒラタキクイムシ、シロアリなどがあり、カビは日本画や書籍に使われている糊などを栄養源に発生する。これらの生物被害に対しては、一般的に燻蒸による駆除が行われる。
関連項目[編集]
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ウィキメディア・コモンズには、博物館に関連するメディアおよびカテゴリがあります。 |
外部リンク[編集]