これまでとは全く異なる仕組みを持つ金融サービス「分散型金融(DeFi:Decentralized Finance、ディファイ)」が注目を集めている。DeFiとは、ブロックチェーンの基盤上で自律的に動くプログラムが、金融機関などを介せずに実現する金融サービスである。市場規模は約1000億ドル(約11兆円)で、1年で約5倍に急増したともいわれる。
「分散型金融(DeFi)」の概念図
(出所:金融庁の資料を基に日経クロステック作成)
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急成長するDeFiだが、ブロックチェーンに詳しい専門家を除いて、その正体はほとんど知られていない。こうしたなか、日本ブロックチェーン協会(JBA)はオンラインで「DeFi勉強会」を複数回にわたって開催している。2021年10月14日に開催した勉強会では、日本銀行でDeFiや中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currencies)といった最新の金融技術を調査する専門家が、DeFiの詳細を一般向けに解説した。
現実世界を介さない金融サービス
日銀の決済機構局FinTechセンターに所属する北條真史氏によると、DeFiの基盤となるブロックチェーンネットワークの特徴は「運営主体がいないことだ」という。
加えて、暗号資産で時価総額2位の「Ether(イーサ、イーサリアムとも)」の基盤である「Ethereum(イーサリアム)」などは、ブロックチェーンと連携したサービスである「分散型アプリケーション(dApps)」の実行基盤でもある。dAppsを構成するプログラムを「スマートコントラクト」と呼び、スマートコントラクトが「(イーサリアムなどの)自律分散的な実行基盤の上で、管理者がいない状況で動作する」(同氏)。
DeFiの実態はdAppsの一種で、暗号資産市場において様々な金融サービスをプログラムによって自律的に提供する仕組みであるという。
暗号資産市場では、利用者は暗号資産取引所で暗号資産と法定通貨を交換、すなわち暗号資産の売買を行うのが一般的だ。暗号資産取引所が現実世界と暗号通貨の世界の接点になっている。これに対しDeFiは「現実世界を介さずに暗号資産の世界の中だけで金融取引ができる」(北條氏)という性質がある。
北條氏はDeFiの特徴を3つ挙げた。1つ目は「金融サービスが運用主体なく自律的に提供される」という点だ。一度動き始めると、人手を介さずにプログラムが自動的に判断して金融サービスを提供する。
2つ目は「暗号資産ネットワークにアクセスできる利用者であれば誰でも利用可能」な点である。利用に当たって、本人確認や審査の必要がない。裏を返せば利用者保護の仕組みがないということでもある。
最後は「誰でも新たなDeFiサービスを開発できる」という点だ。DeFiのサービスは主にオープンなコミュニティーで開発されており、他のサービスのプログラムをコピーしたりまねしたりして新サービスを生み出せる。このため「人気サービスに類似したサービスを立ち上げて、短期的に収益確保を狙うプロジェクトが増えている」(北條氏)。
既にDeFiのサービスは「数百種類に上る」(同氏)。代表的なサービスとしては「分散型取引所(DEX:Decentralized Exchange)」や「レンディング」があるという。
DEXとは、暗号資産取引所をDeFiで実現したものだ。異なる暗号資産同士を交換できる。交換レートはプログラムで自動的に計算される。代表的なDEXとしては「Uniswap」がある。
レンディングとは、暗号資産の貸借サービスである。利用者が手持ちの資産を預けて利息を得たり、暗号資産を借りたりできる。利息や手数料、借入限度額などが自動的に計算される。代表的なレンディングは「Compound」だという。北條氏は、DEXやレンディングがどのように実現されているかという仕組みも解説した。