新国立競技場 建設予定地で起工式
2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の起工式が、11日、都内の建設予定地で行われました。
新国立競技場は、巨額の建設費に批判が高まって白紙撤回された前の計画から1年2か月遅れて、今月1日から本体工事が始まりました。
11日は午前10時から都内の建設予定地に設けられたテントの中で起工式が行われ、安倍総理大臣や丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣、それに東京都の小池知事などが出席しました。
式では、事業主体のJSC=日本スポーツ振興センターの大東和美理事長が「スポーツの聖地として刻んできた歴史を引き継ぎ、国立競技場は、スポーツと文化を発信するスタジアムとして新しく生まれ変わる。4年後の大会をきっかけに、スポーツを通じて日本と世界をつないでいくものとなるよう貢献していく」とあいさつしました。
また、東京都の小池知事は「新国立競技場が2020年の記憶になるとともに、その先の未来も、末永く誰からも愛される施設となることをお祈り申し上げる」と祝辞を述べました。
このあと、出席者の合図に合わせて、競技場の概要を紹介する新たなイメージ映像も公開されました。
新国立競技場は、3年後の2019年11月の完成に向けて、今後、工事が本格化します。
首相「新国立競技場を舞台に世界一の大会に」
安倍総理大臣は新国立競技場の起工式であいさつし、「新時代のスポーツと文化を発信する競技場だ」と述べたうえで、競技場を舞台に、東京大会を世界一の大会にしたいという考えを示しました。
この中で、安倍総理大臣は「アスリートを第1とし、世界最高のユニバーサルデザインを備え、自然環境等との調和や日本らしさを取り入れた、新しい競技場の姿が描かれてきた。その姿は、神宮外苑や旧国立競技場の歴史を受け継ぎ、新時代のスポーツと文化を発信する競技場として生まれ変わることを、私たちに強く確信させてくれるものだ」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「われわれが引き継いだバトンを手に、東京オリンピック・パラリンピックを世界一の大会にしなければならない。新しい国立競技場は、まさに、その舞台にふさわしいスタジアムだ。4年後、多くのアスリートが、この競技場で自己の限界に立ち向かい、人や社会を元気にしてくれると信じている」と述べました。
新国立競技場をめぐる経緯
新国立競技場をめぐっては、2012年11月、イラク出身の女性建築家、ザハ・ハディドさんのデザインした作品が採用されました。乱高下を繰り返した費用は、去年6月、当初の2倍近い2520億円にいったん決まりましたが、巨額の費用と不透明性に国民の批判が相次ぎました。
このため、去年7月、安倍総理大臣が、計画を白紙に戻してゼロベースで見直す考えを表明しました。事業主体のJSCと文部科学省が中心となってきた体制が改められて、政府の関係閣僚会議が発足しました。新たな整備計画の取りまとめが進められ、去年8月には総工費の上限を1550億円とすることが決まりました。
そして、去年12月、建築家の隈研吾氏と大成建設、それに梓設計で作るグループが、設計と施工を行うことが決まりました。
総工費は、政府が設定した上限1550億円の要請を満たす1489億円余りで、工期は2019年11月30日の完成としています。
その後、基本設計と実施設計は、一部に変更はあったもののほぼ順調に進み、東京都に対する建築確認申請の手続きが先月末に終わったことを受けて、本体工事が今月1日から始まっていました。
今後の課題
新国立競技場は、白紙撤回前の計画では、去年10月に着工し、2019年5月の完成を目指すことになっていました。
本体工事の着工は、その計画より1年2か月遅れ、完成予定も、大会開幕の8か月前の2019年11月末になりました。
このため、工事を予定どおり進めることが何よりも重要となります。
また、競技場を「負の遺産」にしないために、大会後の運営や管理をどのようにするのかも課題となっています。
国は、東京大会のあと民間への移行を図ることにしていて、文部科学省や内閣官房、JSC、東京都でつくる作業チームが大会後のスタジアムの活用の在り方や収益を上げる手法などを検討しています。