狐が憑きました。
記紀(千里丘稲荷へ行ってから、帰って-西東社-記紀を見る)。
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稲荷神と狐 [編集]
狐は古来より日本人にとって神聖視されてきた。 720年、既に『日本書紀』に日本武尊を助ける白狐が登場している。
711年に、最初の稲荷神が登場する。 宇迦之御魂神は別名「御饌津神」(みけつのかみ)と言う。狐の古名を「けつ」と言い、御饌津神を「三狐神」と解して、狐は稲荷神の使い、あるいは眷属に収まった。 時代が下ると、稲荷狐は命婦の格(朝廷の屋敷の出入りが可能となる格。)を受け、命婦神あるいは白狐神として上下社に祀られるようになった。
江戸時代に入り、稲荷が商売の神と公認され、大衆の人気を集めると共に、稲荷狐が稲荷神という誤解が一般に広がった。 またこの頃から稲荷神社の数が急激に増え、流行神(はやりがみ)と呼ばれる時もあった。 また仏教系の神である荼枳尼天は金狐・銀狐(きんこ・ぎんこ)という眷属を持ち、稲荷神と同一視される原因となったが、正確には稲荷神社に祀られている狐の多くは白狐(びゃっこ)である。
稲荷神社の前には狛犬の代わりに宝玉をくわえた狐の像が置かれる例が多い。他の祭神とは違い稲荷神には神酒・赤飯の他に狐の好物といわれる油揚げが供えられ、ここから油揚げを使った料理を稲荷と称するようになった。
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キツネ
この項目では、動物について説明しています。
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キツネ(広義) | |||||||||||||||||||||
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アカギツネ(キタキツネ) Vulpes vulpes schrencki
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分類 | |||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||
キツネ(狐) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
fox | |||||||||||||||||||||
属 | |||||||||||||||||||||
狭義には、キツネ属 Vulpes の総称である。広義には、キツネ族のオオミミギツネ属、ハイイロギツネ属、さらにイヌ族のカニクイキツネ属、フォークランドキツネ属、クルペオギツネ属まで含める場合もある。
しかし一般的に「fox」は北半球に広く生息しているキツネ属のアカギツネのことを指し、古来日本で「狐」といえばアカギツネの亜種であるホンドギツネのことを指したが明治以降キタキツネも含むようになった。狭義のキツネ(= アカギツネ)については、「アカギツネ」の項を参照。
目次[非表示] |
現生種 [編集]
族・属の分類には多少の異説がある。
- キツネ族 Vulpini
- キツネ属 Vulpes
- アカギツネ red fox、Vulpes vulpes
- アフガニスタンキツネ (ブランフォードギツネ) Blanford's fox、Vulpes cana
- オグロスナギツネ pale fox、Vulpes pallida
- オジロスナギツネ Rueppel's fox、Vulpes rueppelli
- ケープギツネ Cape fox、Vulpes chama
- コサックギツネ corsac fox、Vulpes corsac
- スウィフトギツネ swift fox、Vulpes velox
- チベットスナギツネ Tibetan fox、Vulpes ferrilata
- ベンガルギツネ Bengal fox、Vulpes bengalensis
- フェネック (フェネックギツネ) fennec、Vulpes zerda
- ホッキョクギツネ arctic fox、Vulpes lagopus (かつては独立属 Alopex に位置づけられた)
- オオミミギツネ属 Otocyon (キツネ族に含めないこともある)
- オオミミギツネ bat-eared fox、Otocyon megalotis
- ハイイロギツネ属 Urocyon
- ハイイロギツネ gray fox、Urocyon cinereoargenteus
- シマハイイロギツネ island fox、Urocyon littoralis
- キツネ属 Vulpes
- イヌ族 Canini (一部)
- カニクイキツネ属(カニクイイヌ属) Cerdocyon
- カニクイキツネ(カニクイイヌ) crab-eating fox、Cerdocyon thous
- クルペオギツネ属 Pseudalopex
- クルペオギツネ (クルペオ) culpeo、Pseudalopex culpaeus
- スジオイヌ hoary fox、Pseudalopex vetulus
- セチュラギツネ Sechura fox、Pseudalopex sechurae
- チコハイイロギツネ Argentine gray fox, chilla、Pseudalopex griseus
- パンパスギツネ pampas fox, Azara's dog、Pseudalopex gymnocercus
- フォークランドキツネ属(フォークランドオオカミ属) Dusicyon
- フォークランドキツネ(フォークランドオオカミ) Falkland island fox、Dusicyon australis
- カニクイキツネ属(カニクイイヌ属) Cerdocyon
キツネの生態 [編集]
食性は肉食に近い雑食性。鳥、ウサギ、齧歯類などの小動物や昆虫を食べる。餌が少ないと雑食性となり人間の生活圏で残飯やニワトリを食べたりする。 イヌ科に分類されるが、イヌ(オオカミ)のような群れをつくらず単独で狩りをするため、イヌのような社会性はあまりない。 基本的に単独生活のホンドギツネも餌が豊富にある場合、宮城県白石市の狐塚のように大きなグループで生活していた例も残っている。 夜行性で非常に用心深い反面、賢い動物で好奇心が強い。そのため大丈夫と判断すると大胆な行動をとりはじめる。人に慣れることで、白昼に観光客に餌をねだるようになる事が問題になっている。
野生におけるキツネは10年程度の寿命とされるが、殆どの場合、狩猟、事故や病気によって2、3年しか生きられないとされている[1]。
一般的に、キツネの体格は、オオカミ、ジャッカル、犬など、イヌ科の他の種よりも小型である。平均的なオスのキツネの体重は、5.9Kg、メスはそれより軽い5.2Kg。俗に言うキツネ顔で、ふさふさした尾を持つ。典型的なアカギツネの毛色は、赤褐色で、通常尾の先は白い[1]。
イヌ科には珍しく、群れず、小さな家族単位で生活し、特にネズミなどのげっ歯類を捕まえて食べる。生後1年も満たないで捕獲訓練をマスターし、獲物を捕らえるようになる。キツネはバッタから果物や木の実まで様々なものを食べる雑食性である。
キツネは警戒心が強く、通常室内のペットには向かないが、ロシアでは45年の選択的交配でギンギツネの創出に成功している。この選択的な繁殖により、毛色のバリエーション、丸い耳、巻き尾など、猫、犬、その他の動物で見られるような物理的、行動特性が変化することが分かった[2]。
その他アカギツネの生態については、「アカギツネ」の項を参照。
研究 [編集]
ロシアの神経細胞学者リュドミラ・ニコラエブナ・トルットは、ロシア科学アカデミーの遺伝学者ドミトリ・ベリャーエフと共に、キツネの人為選択による馴致化実験を行った。100頭あまりのキツネを掛け合わせ、もっとも人間になつく個体を選択して配合を繰り返すことで、わずか40世代でイヌのようにしっぽを振り、人間になつく個体を生み出すことに成功した。同時に、耳が丸くなるなど飼い犬のような形質を発現することも観察された。これはなつきやすさという性質が、(自然、あるいは人為的に)選択されうることを示している。
日本人とキツネの関係 [編集]
キツネを精霊・妖怪とみなす民族はいくつかあるが、文化・信仰と言えるほどキツネにたいして親密なのは日本人くらいである。 日本では、キツネは人を化かすいたずら好きの動物と考えられたり、それとは逆に、稲荷神の神使として信仰されたりしている。また、キツネは特に油揚げを好むという伝承にちなみ、稲荷神を祭る神社では、油揚げや稲荷寿司などが供え物とされることがある。ここから、嘗ての江戸表を中心とした東国一般においての「きつねうどん」「きつねそば」などの「きつね」という言葉は、その食品に油揚げが入っていることを示す。(畿内を中心とした西国では蕎麦に関してはたぬきと呼ばれる場合がある)
語源 [編集]
諸説あるが、『大言海』では、古来のなき声の表す「ケツケツ」「キツキツ」と神道系の敬称を表す「ネ」が結びついたと説明している。『万葉集巻十六』には「さすなべに湯わかせて子どもいちい津の檜橋より来るきつにあむせむ」という、鍋とキツネを詠んだ即興歌が残っており、日本では古代より「キツ」と呼んでいたことを示す資料が残っている[3]。仏教系の説では『日本霊異記』やその話を転記した『今昔物語』では「来つ寝」という語呂合わせが語源と説明している。 平安時代に編纂された日本最古の辞書である『和名類聚抄』には、「狐:韻は(コ)日本の読み(きつね)中国の伝説では100歳になると女に化ける妖怪に変化する。」という説明があり、平安時代には、既にきつねと発音していたことが分かる[3]。
歴史 [編集]
日本の狩猟時代の考古学的資料によると、キツネの犬歯に穴を開けて首にかけた、約5500年前の装飾品[4]やキツネの下顎骨に穴を開け、彩色された護符のような、縄文前期の(網走市大洞穴遺跡)ペンダント[5]が発掘されている。またキツネの生息域にあり、貝塚の中に様々な獣骨が見つかりながら、キツネだけが全く出てこないような地域(福井県)も存在する[6]。
日本人がキツネを稲と関連させた起源は、文化人類学的推察にもとづく農耕民族の必然だったとする必然起因説と、歴史学的手法に基づいて推察して、神の名に「狐」を宛てたことによるとする、誤解起因説の二通りがあって特定はされておらず、その後大陸より渡来した秦氏の勢力によって、キツネは稲荷神の眷属に収まったという流れになっている。
- 稲作には、穀物を食するネズミや田の土手に穴を開けて水を抜くハタネズミが与える被害がつきまとう。 稲作が始まってから江戸時代までの間に、日本人はキツネがネズミの天敵であることに注目し、キツネの尿のついた石にネズミに対する忌避効果がある事に気づき、田の付近に祠を設置して、油揚げ等で餌付けすることで、忌避効果を持続させる摂理があることを経験から学んで、信仰と共にキツネを大切にする文化を獲得した[7]。
- 日本古来の世界観は山はそれ自体が山神であって、山神から派生する古木も石も獣(キツネ)もまた神であるというが基としてあると言われている[8]。
- 民間伝承の狐神信仰の発生がいつ始まったかの特定は難しいとした上で、発生の順番から考えて、土地が開墾される以前にキツネが生息しており、畏敬された狐神と稲荷の結合は、田の神信仰と稲荷の結合に先立つであろうと言われている[8]。
- 一方、稲荷神社の神は、宇迦之御霊神別名御食神(みけつがみ)であって三狐神と書き誤って、日本中に誤解が定着したという説も根強く、有力な説である。
- 『日本書紀』斉明5年(659年)には、(皇孫建王が唖であったために?)神の宮(島根県八束郡八雲村の熊野神社)を改修し始めた直後、狐が現われて柱を曳く蔓の綱を根元から食い切り、狗(山犬)が現われて死人の手を言屋社(いうやのやしろ)(島根県八束郡東出雲町の揖屋神社)に残したという記事(つまりみかどの死の予兆が下された)が残されている[9]。
- とにかく正史に狐の記事が記載されたのは、『日本書紀』斉明記3年(657年)石見に現れた白狐の記事であり[9]、伝記に狐が記載されたのは『日本霊異記』欽明天皇の時代(540年-571年)とされている[3]。キツネが騙す、化ける妖怪の一種であるという概念は、仏教と共に伝来したもので、中国の九尾狐の伝説に影響されたものである[3]。
以下は日本の文化におけるキツネの歴史の大まかなプロットである。
- アニミズムの時代
- 弥生時代、日本に本格的な稲作がもたらされるにつれネズミが繁殖し、同時にそれを捕食してくれるキツネやオオカミが豊作をもたらす益獣となった[10][11]。 柳田国男は、稲の生育周期とキツネの出没周期の合致から、キツネを神聖視したという民間信仰が独自に芽生えたと言う説を述べている。必然起因説はその発展系と見られる。
- 神道への吸収
- 大和時代に入り朝廷が勢力を拡大する中、抵抗する土着の神を持つ民を排除し、狐と呼んで蔑視していた。ところが後半に入って、突然(山神か神の使いとして)狐が登場する。日本書紀には、ヤマトタケルが東の蝦夷(えみし)を討ち、科野坂から美濃へ行く山中で霧で立ち往生した際、白狐(但し白犬説もある)が現れ導いたと記されている。
- 御饌津神(みけつ)が誤って三狐神と書かれた」という説が定説である。しかし秦氏が土着民への懐柔策として使用させたとの説もある。
- 土着の農民は、独自の山の神-田の神を信仰しており、狐をその先触れとする文化があったものの、『日本書紀』の欽明記の時代に伊勢と交易を行い、後に国庫の管理者となる程の秦氏の経済的な勢力に押され、元は田の神-山の神の祠であった場所が秦氏の神社になった事に、農民たちは旧来の神を祭りながらも抗えなかったであろうと言われている[12]。秦氏の稲荷の眷属の狐は「命婦(みょうぶ)」と呼ばれ、命婦の位を持っているが、最初からそのような位を持っていた訳ではないということは、伏見稲荷の縁起によって示されている。
- こうして土着の神は豊穣をもたらす荒神的な性格から「宇迦之御魂大神」の「稲荷」として認識され、シンボルである狐自体は眷属に納まったと考えられる。
- 仏教による変遷
- 飛鳥時代、朝鮮半島より仏教が伝来し、野干(ジャッカル)を従えた豊穣の神ダキニ天と狐を眷属とした豊穣の神稲荷が同一視されることとなる。説話の中で多い、人に化ける悪いキツネが僧によって降参する(仏の勝利)という図式は、ダキニ天の生い立ちそのものである。このころから狐に悪狐が登場し、ある種の精神病を狐の仕業とし、法力で治せるものと宣伝された。また密教では狐霊が使われ呪術が行われた。このようにしてキツネが化ける妖怪であるというイメージが民衆に定着した。詳細は妖狐を参照。
- 民間信仰の開花
- このような状態はかなり後世まで続いたが、キツネは大衆に憎まれる存在とはならなかった。江戸時代に入り商業が発達するにつれて、稲荷神は豊作と商売繁盛の神としてもてはやされるようになり、民間信仰の対象として伏見のキツネの土偶を神棚に祭る風習が産まれた。
- 明治政府が不敬としてキツネの土偶の製造を禁じると、細々と生産されていたネコの土偶が大流行し定番商品(招き猫)となった。狐霊に白黒赤金銀があるように招き猫にも白黒赤金が存在するのはそのためである。
- 社の裏手にキツネの巣穴があるような稲荷は多く見られることから、キツネの巣穴を供養する風習が江戸時代から昭和にかけて全国各地に広がっていたことが判る。キツネの巣穴に食べ物を供える習慣は穴施行、寒施行となって現在も残っている。またそのような由来を持つ狐塚(田の神の祭場)も数多くある。安倍晴明で有名な葛葉稲荷神社の裏手には石組みの行場が残っている。
- 廃仏毀釈と近代化
- 明治時代に入り、廃仏毀釈の運動が起こり、稲荷神社は少数の仏教系と、多数の神道系に分かれた。
宗教とは関係ないものの、最近では児童文学や絵本、アニメーションの登場人物に、信頼できる友人だったり、頼もしいパートナーだったりと従来のイメージを覆すようなキツネが登場するようになってきた。
日本の説話の中のキツネ [編集]
キツネ(狐)が霊獣として伝えられる歴史は非常に古く、『日本霊異記』に、すでにキツネの話が記されている。美濃大野郡の男が広野で1人の美女に出会い、結ばれて子をなすが、女はキツネの化けた姿で、犬に正体を悟られて野に帰ってしまう。しかし男はキツネに、「なんじ我を忘れたか、子までなせし仲ではないか、来つ寝(来て寝よ)」と言った。なお、これを元本に発展させた今昔物語にもこの話は収録され、キツネの語源としている。 キツネは、人間との婚姻譚において語られることが多く、後に『葛の葉』、『信太妻(しのだづま)』を経、古浄瑠璃『信田妻(しのだづま)』において、異類婚姻によって生まれた子の超越的能力というモティーフが、稀代の陰陽師、安倍晴明の出生となって完成される。
「狐」は、蜘蛛、蛇などと同じく大和朝廷側から見た被差別民であったという見方もある。彼らは、大和朝廷が勢力を伸ばす段階で先住の地を追われた人々であり、人ではない者として動物の名称で呼ばれたという見方である。彼らが、害をもたらす存在として扱われる場合、それは朝廷側の、自分たちが追い出した異民族が復讐してくるのではという恐怖心の現れであると考えられる。また、動物が不思議な能力(特殊能力)を持つというのは、異民族が持つ特殊な技術を暗に意味している場合がある。この考え方に沿えば、異類婚姻は、それらの人々との婚姻を意味することになる。つまり女が身元を偽って(化けて)婚姻したものの里が暴かれ、子の将来を案じて消えてしまった物語と解される。
キツネの子が神秘的能力をもつというのは、稲荷の神の使いとして親しまれてきたキツネが、元来は農耕神として信仰され、豊穣や富のシンボルであったことに由来するものである。狐婚姻の類話には、正体を知られて別れたキツネの女が、農繁期に帰ってきて田仕事で夫を助けると、稲がよく実るようになったという話がある。また江戸の王子では、大晦日の夜、関八州のキツネが集い、無数の狐火が飛んだというが、里人はその動きで豊作の吉凶を占ったと伝えられており、落語「王子の狐」のモチーフとなっている。
人間を助ける役割を果たすキツネの側面は、かつてキツネが、農耕神信仰において重要な役割を果たしていたことの名残りであるといえ、江戸大窪百人町など、郊外にある野原に出没する特定のキツネは名前をつけて呼ばれ、人間を化かすが、災害や変事を報らせることもあった。
岐阜県の老狐「ヤジロウギツネ」は、僧に化けて、高潔な人物の人柄を賞揚したという。群馬県の「コウアンギツネ」もこの類で、 白頭の翁となり、自ら128歳と述べ、常に仏説で人を教諭し、吉凶禍福や将来を予言した。千葉県飯高壇林の境内に住みついた「デンパチギツネ」も、若者に化けて勉学に勤しんでいる。 その他、静岡県の「オタケギツネ」は、大勢の人々に出す膳が足りない場合にお願いに行くと、膳をそろえてくれるといわれていた。岩手県九戸のアラズマイ平に棲む白狐は、村の子どもと仲がよく、一緒に遊んでいたという。また、鳥取県の御城山に祭られている「キョウゾウボウギツネ」は、城に仕え、江戸との間を2、3日で往復したと伝えられている。
宝暦3年(1753年)8月、江戸の八丁堀本多家に、日暮れから諸道具を運び込み、九ツ前、提灯数十ばかりに前後数十人の守護を連れた鋲打ちの女乗物が、本多家の門をくぐった。5、6千石の婚礼の体であったが、本多家の人は誰も知らなかったという。このような「キツネノヨメイリ」には必ずにわか雨が降るとされるが、やはりこれも降雨を司る農業神の性質であろう。
しかし、農耕信仰がすたれるにつれ、キツネが狡猾者として登場することも多くなり、『今昔物語』でも「高陽川の狐、女と変じて馬の尻に乗りし語」では、夕に若い女に化けたキツネが、馬に乗った人に声をかけて乗せてもらうが、4、5町ばかり行ったところでキツネになって「こうこう」と鳴いたとある。『行脚怪談袋』には、僧が団子を喰おうとするキツネを杖で打ったら、翌日そのキツネが大名行列に化けて仕返しをしたという話がある。ほかにも『太平百物語』に、京都伏見の穀物問屋へ女がやって来て、桶を預けていった。ところがその桶の中から、大坂真田山のキツネと名乗る大入道が現われて、この家の者が日ごろ自分の住まいに小便をして汚すと苦情を述べた。そこで主人は入道に詫びて、3日間赤飯と油ものをキツネのすみかの穴に供えて許しを乞うたという。
キツネは女に化けることが多いとされるが、これはキツネが陰陽五行思想において土行、特に八卦では「艮」に割り当てられることから陰気の獣であるとされ、後世になって「狐は女に化けて陽の存在である男に近づくものである」という認識が定着してしまったためと考えられる。関西・中国地方で有名なのは「おさん狐」である。このキツネは美女に化けて男女の仲を裂きにくる妖怪で、嫉妬深く男が手を焼くという話が多数残っている。キツネが化けた女はよく見ると、闇夜でも着物の柄がはっきり見えるといわれていた。女の他、男はもちろん、月や日、妖怪、石、木、電柱、灯籠、馬やネコ、家屋、汽車に化けるほか、雨(狐の嫁入り)や雪のような自然現象を起こす等、実にバリエーションに富んでいる。
霊狐には階級があるとされ、住む場所、妖力によって「地狐」、「天狐」」、「空狐」などに分類される。長崎五島列島でいう「テンコー(天狐)」は、 憑いた者に神通力を与えるが、これに反して「ジコー(地狐)」の方はたわいのないものといわれる。
妖怪の狐は九尾の狐など尾が分かれていることを特徴とすることがある。九尾の狐は『山海経』では、「その状は、狐の如くで九つの尾、その声は嬰児の様、よく人を喰う。食った者は邪気に襲われぬ」という。日本ではその正体が白面金毛九尾の狐である玉藻前(たまものまえ)の物語が有名で、天竺摩伽多国では華陽夫人となって斑足太子を惑わせ、中国では夏の妹妃、殷の妲己、周の褒似となって国を滅ぼした後、玉藻前となって鳥羽上皇の寵愛を受け、本朝を滅ぼそうとするが、陰陽師・安倍泰成(安倍泰親、あるいは安倍晴明とも)によって正体を見破られ、那須野原で退治される。しかしその妖力は衰えず、謡曲『殺生石』では、その怨霊は殺生石となって、触れるものの命を奪っていたが、僧玄翁が、焼香、説法をして殺生石を教化した。石を砕く鎚「玄翁(げんのう)」 は、 この玄翁の名に由来するとされる。
狐憑きと俗信 [編集]
狐信仰の変種であり、日本独自の現象として、「狐憑き(きつねつき)」が存在する。狸、蛇、犬神憑きなどに比べシェアが広く、全国的に見られ、かつ根強い。狐憑きは、精神薄弱者や暗示にかかりやすい女性たちの間に多く見られる発作性、ヒステリー性精神病と説明され、実際に自らキツネとなって、さまざまなことを口走ったり、動作をしたりするという話が、平安時代ごろから文献に述べられている。行者や神職などが、「松葉いぶし」や、キツネの恐れる犬に全身をなめさせるといった方法で、キツネを落とす呪術を行っていた。
狐憑きで有名なものは、長篠を中心に語り伝えられる「おとら狐」で、「長篠のおとら狐」とか「長篠の御城狐」などと呼ばれていた。おとら狐は、病人や、時には健康な人にも憑くことがあって、憑いた人の口を借りて長篠の戦いの物語を語る。櫓(やぐら)に上がって合戦を見物しているときに、流れ弾に当たって左目を失明し、その後左足を狙撃されたため、おとら狐にとり憑かれた人は、左の目から目やにを出して、左足の痛みを訴えるという。
狐憑きの一種に「狐持ち」という現象があり、狐持ちの家系の者はキツネの霊を駆使して人を呪うという迷信があった。「飯綱(いづな、イイズナ)使い」と呼ぶ地方もあり、管狐(くだぎつね)や、オサキ、人狐(ニンコ)を操ると信じられていた。これらの狐霊は、人に憑いて憎む相手を病気にしたり、呪いをかけたりすることができると信じられてきた。狐持ちの家系の者はこの迷信のため差別され、自由な結婚も認められなかった。現在でもなお、忌み嫌われている地方がある。
キツネにまつわる俗信には、日暮れに新しい草履(ぞうり)をはくとキツネに化かされるというものがあり、かなり広い地域で信じられていた。下駄はもちろん靴でも、新しいはきものは必ず朝におろさなければならないとされ、夕方、新品をはかねばならないときは、裏底に灰か墨をぬらねばならないといわれている。
キツネに化かされないためには、眉に唾をつけるとよいというが、これは、キツネに化かされるのは眉毛の数を読まれるからだと信じられていたためである。真偽の疑わしいものを「眉唾物(まゆつばもの)」というゆえんである。
また、得体の知れない燐光を「狐火」と呼び、「狐に化かされた」として、説明のつかない不思議な現象一般をキツネの仕業とすることも多かった。 しかし、化けるにしろ報復譚にしろ、キツネの話はどこかユーモラスで、悪なる存在というよりは、むしろトリックスター的な性格が強い。(狐火の詳細は狐火項を参照。)
近代の狐伝説 [編集]
中には法話や俗信では説明のつかない、比較的新しい伝説や伝承も存在する。 大阪府の松原市には、戦後しばらくの間まで人に混じって、化けた狐たちが生計を立てていたという伝承が残っている。 彼らは人々と良好な交流関係を保っていただけでなく、姓と名を持ち、住民として住民票が交付されていた。 詳細は松原の狐たちを参照。
「キツネ」の入った言葉一覧 [編集]
詳細は「キツネの入った言葉一覧」を参照
文学・音楽・映画などの芸術作品・キャラクター [編集]
- 葛の葉(歌舞伎)
- 有名な信太の森の葛の葉狐の伝説を歌舞伎にしたもの。
- 王子の狐(落語)
- 美女に化けた狐を男が逆に化かすという滑稽噺。
- 釣狐(狂言)
- 狐の役は狂言ではもっとも難しいとされ、「狂言師は猿に始まり、狐に終わる」ともいわれる。
- 利口な女狐の物語(オペラ)
- レオシュ・ヤナーチェクのオペラ。
- 日照り雨(映画)『夢』の第一話に収録。
- 黒澤明監督。見てはならないという母の言葉を無視して少年は狐の嫁入りを覗いてしまう。家に帰ると母から自殺用の短刀を渡され、死ぬ気で狐に謝罪してこいと叱られる。自然を侮辱する者への警告が込められた作品。
- キタキツネ物語(映画)
- 子ぎつねヘレン(映画)
- 北海道在住の獣医師で作家の竹田津実原作の小説「子ぎつねヘレンがのこしたもの」の映画化作品。2006年3月に劇場公開。河野圭太監督作品。配給は松竹。
- ごんぎつね(童話・テレビアニメ)
- 新美南吉原作。「ごん」というきつねが主人公。村人の兵十にいたずらしたごんは…。
- 手袋を買いに(童話)
- 新美南吉の作。手袋を買いにでた子ぎつねの話。一部の国語の教科書にも掲載された。
- 雪わたり(童話)
- 宮沢賢治の作。キツネの幻燈会に招待された子供たちの物語。古い偏見を払拭するために、キツネたちが子供を啓蒙しようとする姿がおもしろい。
- 土神と狐 (童話)
- 宮沢賢治の作。樺の木と仲の良いプレイボーイの狐に嫉妬した土神の話。土神は嫉妬に狂い、狐の首を捻り地面に叩きつけ何回も踏んづけた。狐の家は暗くて詩集も望遠鏡も何もなく、ポケットをさぐると草の穂が二本だけ・・・。
- 星の王子さま プチ・プランス (童話・テレビアニメ)
- サンテグジュペリ原作の星からやってきた王子様の物語。キツネは王子様の最初の友達で重要な助言をする。
- イソップ童話(童話)
- 「カラスとキツネ」「酸っぱいブドウ」はじめ、多くの話にキツネが登場する。
- おれたちともだち (絵本・テレビアニメ)
- 内田麟太郎(作)、降矢なな(絵)の絵本。オオカミとキツネの間の友情を描く。
- チロヌップのきつね(絵本・アニメ) たかはしひろゆき文・絵 金の星社
- 孤島で生まれたこぎつねが優しい老夫婦と、密猟者の二種類の人間に出会います。雪の降る中、ワナにかかったこぎつねを暖めるために母ぎつねは毛布になって死んでいく。戦争が激しくなったころの話。
- こんとあき (絵本) 林明子
- ぬいぐるみのこんはあきちゃんが怖い思いをしたときは「だいじょうぶ、だいじょうぶ」といって勇気づけてくれる。犬に噛まれたこんを直すために、あきはこんを背負って走る。だいじょうぶ、だいじょうぶ・・・。こんの声はだんだん小さくなって聞こえなくなってしまう。
- きつねの窓 (絵本) 安房直子文 織茂 坪田恭子絵
- ききょうの野原できつねに指を染めてもらい、もう取り戻せなくなった過去を見せてもらう青年の物語。家に帰って手を洗ってしまい、不思議の窓は消えてしまう。
- きつねとぶどう (絵本) 坪田譲治作 いもとようこ絵
- 自分を犠牲にして息子を守った母ぎつねの物語。
- きつねのきんた (絵本)かこさとし作 いもとようこ絵
- 人間に家を壊され、森を逃げ出したこぎつねの物語。ある屋敷に逃げ込んだきんたは毛皮になり果てたお母さんの姿を見てしまう。
- ねずてん
- ネズミの天ぷらでキツネから大物アマゴをせしめようと、二人で開いたねずてん屋。案の定誰も来ず、闇の中で色々考えこむ内、お互いをキツネではないかと疑い始め幻惑にかかってしまう。気がついたらねずてんは消えていた。
- きつねのおきゃくさま (小説)あまんきみこ作 二俣英五郎 絵
- やせっぽちのヒヨコ、アヒル、ウサギを太らせて食べようとはらぺこキツネは家に招いて御馳走をふるまう。ヒヨコ、アヒル、ウサギから優しくて、親切で、神様みたいな友達と言われてキツネの心は変っていく。最後は三匹を食べにきたオオカミと戦って追い払い、力尽きて死んでしまう。
- ニルスのふしぎな旅 (小説・テレビアニメ)
- 妖精の罰で小人にされ、旅をしながら自然の大切さを学ぶニルス少年の冒険物語。原作者の国スウェーデンの政府から高く評価されたアニメ。
- NARUTO -ナルト- (テレビアニメ)
- アカデミーの落第生だったナルトが大切な事を学びながら技を磨く物語。忍者ナルトは2006年世界で尊敬される日本人100人に選出された。彼の内に九尾の妖狐が宿っているという設定。
- かいけつゾロリ (テレビアニメ)
- イタズラ道を極める旅をするゾロリはおっちょこちょいでいつも大騒動を起こす。でもガラクタからすごい発明品を作る才能がある。日本のテレビアニメでキツネが主役なのはこの作品のみ。
- きつねと猟犬/きつねと猟犬2
- ディズニーアニメ キツネのトッドと猟犬のコッパーの友情の物語。
- きつねのコンピューター(童謡)
- こぎつね(文部省唱歌) ドイツ民謡 作詞:勝承夫
- 原曲の翻訳:忠告するよきつねさん泥棒にはならないで、ガチョウ料理なんか必要ないでしょ、ねずみで我慢してよ
- キツネ狩りの歌 (歌謡曲): 作詞/作曲 中島みゆき
- 秋ぎつね (童謡):作詞/作曲 谷山浩子
- 女の子に片想いして失恋したきつねの物語になっている。アルバムしっぽのきもちに収録。
- その他
観光用のキツネの放し飼い飼育施設 [編集]
- 北きつね牧場
- キタキツネ 約100頭規模、『北の国から』スペシャルエディションのロケ地
- 北海道きつね村・トナカイ観光牧場
- オホーツク観光株式会社が経営している施設。
- フクロウとキタキツネの森
- フクロウのアトラクションも見られる、キタキツネの放し飼い施設。
- キツネやフクロウに関する小規模な学習コーナーもあり、専門書や写真集もおいている。
- くまがい北きつね牧場
- 木彫り職人が経営する個人経営のドライブイン。作者のサインが入った木彫りのキツネが直接買えたり、成獣のキツネ(季節によっては仔狐も)が抱っこできる店。 放し飼いの狐は1~2頭ほど。
- 宮城蔵王キツネ村
- キタキツネ・銀ギツネ・十字ギツネ・ホッキョクギツネ・ブルーフォックス混合 約100頭規模、映画『子ぎつねヘレン』役のキツネの里
脚注 [編集]
- ^ a b Journal of Mammalogy
- ^ Early Canid Domestication: The Fox Farm Experiment
- ^ a b c d 『怪異・きつね百物語』p1,p7,p.12 笹間良彦著
- ^ 『発掘された日本列島2009』p.27 文化庁
- ^ 『貝塚の獣骨の知識』p127-p128 金子浩昌著
- ^ 『鳥浜貝塚』森川昌和
- ^ 食農教育 No.53 2007年3月号『ごんぎつねがいたころ』(東京農業大学客員教授)守山弘
- ^ a b 『稲荷信仰』p.15,p143 (筑波大学客員教授・民族学者)直江広治著
- ^ a b 『日本書紀(四)』岩波文庫 ISBN 4-00-300044-7
- ^ 上智大学紀尾井文学会 公式ブログ
- ^ 『「共生」のシンボル・狐』 岩井国臣公式HP【私の旅】
- ^ 『稲荷信仰』p.8 直江広治著
参考文献 [編集]
- 松村潔『日本人はなぜ狐を信仰するのか』講談社現代新書 講談社 ISBN 978-4-06-149829-7
関連項目 [編集]
ウィクショナリーに狐の項目があります。 |
ウィキクォートに狐に関する引用句集があります。 |
ウィキメディア・コモンズには、キツネに関連するメディアがあります。 |
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