電力自由化
電力自由化(でんりょくじゆうか)、または電力市場の自由化とは、従来自然独占とされてきた電気事業において市場参入規制を緩和し、市場競争を導入することである。電気料金の引き下げや電気事業における資源配分の効率化を進めることを目的としている。
具体的に行われることとしては、
- 誰でも電力供給事業者になることができる(発電の自由化)
- どの供給事業者からでも電力を買えるようにする(小売の自由化)
- 誰でもどこへでも既設の送・配電網を使って電気を送・配電できるようにする(送・配電の自由化)
- 既存の電力会社の発電部門と送電部門を切り離すことで競争的環境を整える(発送電分離)
- 電力卸売市場の整備
理論的背景[編集]
電力産業には規模の経済があると考えられてきたため、多くの国で電力会社に地域独占を認め、その代わり料金を規制してきた。ところが、2つの環境変化が地域独占の必要性をなくした。
- 発電についての規模の経済が重要でなくなった。現在では個々の発電所の発電能力に比べて需要規模が十分大きいため、発電に関しては規模の経済がなくなっている。その一つの原因はガスタービン発電などによって小規模でも安く発電ができる技術進歩が起きたことであり、もう一つの原因は多くの国で単に電力需要が増加し続けたため、個々の発電所の生産規模に比べて電力市場が大きくなったことによる。このため多くの発電事業者が競争的に電力供給に参加できることになった。
- 情報通信技術の発達により分散的な発電が可能になった。発電に関する競争が導入されると多くの需要家と供給家による需要供給を瞬時に調整する必要がある。このため、以前は電力会社内の閉じた世界で発電をしなければ能率的に給電指令を行えなかった。しかし、情報通信技術の発達によって分散的な市場参加者間の需給調整が可能になった(スマートグリッドも参照)。
このような環境変化によって発電に関する競争が導入できるようになった。これが電力の自由化である。なお、送電配網に関しては規模の経済があるため、発電事業の自由化後にも送電網提供サービスは独占のまま残し、送電配料金は従来通り規制することになる[1]。
自由化は2つのルートで電気料金を引き下げると考えられていた[2]。
- 従来の総括原価主義の規制下のように、無駄なコストまで料金に上乗せすることができなくなる。反面、コストを引き下げた企業はその分利潤を増大することができる。このため競争によって発電コストが下がる。
- 電力料金が需給のバランスで決まるようになると夏のピーク時間帯の電力料金は高くなる。夏が蒸し暑い日本では、夏の冷房電力需要量が大きく、このピーク時間帯の需要に備えて過大な送電や発電の設備がつくられてきた。ピーク時の高い電力料金によってこの時間帯の需要量が抑えられると、これまでのような過大な施設は不用になり、ピーク時以外の時間帯の電力料金は大幅に引き下げられる。
発送電分離[編集]
発送電分離とは電力会社の発電事業と送電事業を分離することである。
- 会計分離(accounting unbundling)
- 内部補助を禁止するため、既存電力会社の発電・送電の部門毎に財務諸表を作成する。
- 機能分離(functional unbundling、運用分離とも)
- 系統運用の中立性・公平性を確保するため、発電・送電部門間の情報を遮断する。
- http://denki-erabu.jp/about/
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