「大阪市特別区設置住民投票」とは、大阪都構想の実現の是非を問う大阪市在住の住民を対象とする住民投票。
橋下徹大阪市長を中心とする大阪維新の会(維新)が実現を目指して掲げている構想である「大阪都構想」の賛否を問う住民投票。都構想案は2017年4月に今の大阪市を廃止して、現在ある24の行政区を「北区」「湾岸区」「東区」「南区」「中央区」の5つの特別区に再編、大阪市長ならびに大阪市議会を廃止し、各特別区に区長・区議会を設置。大阪市の仕事のうち教育や福祉などを特別区に、都市計画やインフラ整備といった広域行政を府に移すと定めている[1]。
大阪市選挙管理委員会は2015年3月20日、住民投票の日程を同年4月27日告示、5月17日投開票と決めた[2]。3年前に成立した「大都市地域における特別区の設置に関する法律(大都市地域特別区設置法)」に基づいて、政令指定都市の廃止を問う全国初の住民投票となる。
住民投票の対象は特別区の設置エリアである大阪市内で、4月2日時点で約211万人。大都市地域特別区設置法に基づき、投票率に関係なく結果は法的拘束力を持つ[3]。賛否の呼びかけには公職選挙法が準用されるが、活動費用やビラ、ポスターの種類や枚数などには制限がなく、街頭運動も投開票の当日まで可能[4]。
投票率に関係なく投票結果は成立し、有効投票のうち賛成票が反対票を1票でも上回れば、大阪市の廃止ならびに5つの特別区の設置が決まる。なお、賛成多数で都構想への移行が決まっても、府の名称を「大阪都」とするには、新たな法整備が必要になる。そのため維新は住民投票で賛成多数だった場合、国に法改正を働きかける方針[5]。一方、反対票が賛成票を上回るか、賛成票と反対票が同数ならば、今の大阪市が存続することになる[6]。
ちなみに、住民投票で都構想が否決された場合、橋下は同年12月の大阪市長任期の満了と共に政界から引退する意向を示している[7]。
住民投票データ[編集]
選挙日程[編集]
- 告示日:2015年4月27日
- 投票日:2015年5月17日(即日開票)
なお、不在者投票は2015年4月28日より開始。
キャッチコピー[編集]
自分のまちのことやから、自分で決めなアカン。
各政党のスタンス[編集]
投票結果[編集]
- 当日有権者数:2,104,076人[8]
- 投票率:66.83%
- 賛成:694,844票(得票率:49.6%[9])
- 反対:705,585票(得票率:50.4%)
区別投票結果[編集]
大阪市24区のうち、11区では賛成得票率が、13区では反対得票率が、それぞれ多い結果となった。概ね西部沿岸部と南部では反対多数であり一方で大阪環状線より北東の地域では賛成優勢であった。
区名 | 有権者数 | 賛成 | 反対 | 賛成得票率 (%) | 反対得票率 (%) | 有効票数 | 無効票数 | 投票者数 | 投票率 (%) | 協定書による区割り案 |
北区 |
94,128 |
36,019 |
25,001 |
59.0% |
41.0% |
61,020 |
228 |
61,248 |
65.1% |
北区 |
都島区 |
82,237 |
30,135 |
26,671 |
53.0% |
47.0% |
56,806 |
205 |
57,011 |
69.3% |
北区 |
福島区 |
56,798 |
21,586 |
17,267 |
55.6% |
44.4% |
38,853 |
131 |
38,984 |
68.6% |
北区 |
此花区 |
54,470 |
17,597 |
18,872 |
48.3% |
51.7% |
36,469 |
137 |
36,606 |
67.2% |
湾岸区 |
中央区 |
71,819 |
24,336 |
20,657 |
54.1% |
45.9% |
44,993 |
164 |
45,157 |
62.9% |
中央区 |
西区 |
70,287 |
26,094 |
19,160 |
57.7% |
42.3% |
45,254 |
162 |
45,416 |
64.6% |
中央区 |
港区 |
66,673 |
21,410 |
23,351 |
47.8% |
52.2% |
44,761 |
172 |
44,933 |
67.4% |
湾岸区 |
大正区 |
55,159 |
16,646 |
21,211 |
44.0% |
56.0% |
37,857 |
131 |
37,988 |
68.9% |
湾岸区 |
天王寺区 |
54,774 |
18,327 |
20,815 |
46.8% |
53.2% |
39,142 |
174 |
39,316 |
71.8% |
中央区 |
浪速区 |
48,936 |
13,563 |
12,189 |
52.7% |
47.3% |
25,752 |
98 |
25,850 |
52.8% |
中央区 |
西淀川区 |
75,827 |
23,670 |
28,337 |
45.5% |
54.5% |
52,007 |
179 |
52,186 |
68.8% |
湾岸区 |
淀川区 |
138,515 |
48,566 |
38,903 |
55.5% |
44.5% |
87,469 |
379 |
87,848 |
63.4% |
北区 |
東淀川区 |
136,353 |
43,388 |
41,340 |
51.2% |
48.8% |
84,728 |
336 |
85,064 |
62.4% |
北区 |
東成区 |
61,085 |
20,689 |
20,667 |
50.0% |
50.0% |
41,356 |
194 |
41,550 |
68.0% |
東区 |
生野区 |
83,886 |
25,396 |
29,190 |
46.5% |
53.5% |
54,586 |
236 |
54,822 |
65.4% |
東区 |
旭区 |
74,371 |
23,145 |
28,048 |
45.2% |
54.8% |
51,193 |
209 |
51,402 |
69.1% |
東区 |
城東区 |
132,091 |
46,728 |
45,784 |
50.5% |
49.5% |
92,512 |
338 |
92,850 |
70.3% |
東区 |
鶴見区 |
85,852 |
29,859 |
29,752 |
50.1% |
49.9% |
59,611 |
222 |
59,833 |
69.7% |
東区 |
阿倍野区 |
85,354 |
30,434 |
32,446 |
48.4% |
51.6% |
62,880 |
254 |
63,134 |
74.0% |
南区 |
住之江区 |
100,867 |
33,184 |
36,880 |
47.4% |
52.6% |
70,064 |
250 |
70,314 |
69.7% |
南区/ 湾岸区 |
住吉区 |
123,549 |
38,623 |
45,950 |
45.7% |
54.3% |
84,573 |
373 |
84,946 |
68.8% |
南区 |
東住吉区 |
105,456 |
34,079 |
37,322 |
47.7% |
52.3% |
71,401 |
363 |
71,764 |
68.1% |
南区 |
平野区 |
155,527 |
46,072 |
56,959 |
44.7% |
55.3% |
103,031 |
487 |
103,518 |
66.6% |
南区 |
西成区 |
90,062 |
25,298 |
28,813 |
46.8% |
53.2% |
54,111 |
233 |
54,344 |
60.3% |
中央区 |
大阪市計 | 2,104,076 | 694,844 | 705,585 | 49.62% | 50.38% | 1,400,429 | 5,655 | 1,406,084 | 66.83% | |
出典:大阪市選挙管理委員会[10][11]
性別・世代別投票結果[編集]
朝日新聞社と朝日放送(ABC)は、投票を済ませた有権者を対象に出口調査を実施(調査は大阪市内60カ所の投票所で実施した。有効回答は2625人)。それによると、20代(61%)、30代(65%)、40代(59%)、50代(54%)、60代(52%)の各世代で、賛成が過半数を占めた。一方、70歳以上は反対が61%で賛成を上回った[12]。
また、共同通信社、毎日新聞社、毎日放送、関西テレビ、産経新聞社の合同出口調査(投票を終えた有権者2781人から回答)では、賛否を性別でみると、男性が賛成55・5%と上回る一方、女性は反対が52・0%と賛否が逆転する結果となった[13]。
支持政党別投票結果[編集]
読売新聞社と読売テレビ(YTV)は17日、「大阪都構想」に関する賛否について出口調査を実施(調査は市内24区の投票所計280か所で行い、投票を終えた有権者1万77人から回答)[14]。
国政の支持政党別でみると、橋下が最高顧問を務め都構想を推進する維新の党支持層は94%が賛成。一方、民主・公明・共産の各党の支持層は反対がいずれも8割近くを占めた。一方、反都構想を主導した自民党支持層では賛成45%、反対52%、無党派層は賛成51%、反対47%とそれぞれ賛否が分かれた。
また、橋下への支持との関係では、橋下を支持する人の89%が賛成、橋下を支持しない人の92%が反対と回答した。
選挙後[編集]
今回の結果を受けて、橋下は17日夜、大阪維新の会の幹事長を務める大阪府知事の松井一郎と共に記者会見し「大阪都構想は、市民に受け入れられなかったということで、間違っていたということになるのだろう。僕自身に対する批判もあるだろうし、説明しきれなかった僕自身の力不足だと思う。今の市長の任期まではやるが、それ以降は政治家はやらない。政治家は僕の人生からは終了だ」と述べ、ことし12月までの任期は全うするものの、次の市長選挙には立候補せず、政界を引退する意向を表明。また、橋下は記者団から「将来、再び政治家に戻る可能性はあるのか」と質問されたのに対し、「ない。弁護士をやる」と述べた[15]。
また、この結果を受けて、大阪維新の会の関連団体である維新の党代表・江田憲司は18日未明、「責任を痛感している」などとして党代表を辞任する意向を表明[16][17]、「希有な政治家である橋下さんを引退に追い込んだ。サポートが不十分だった。しっかりけじめをつけたい」とコメントした[18]。
政界の反応[編集]
「大阪都構想」の賛否を問う大阪市の住民投票が否決されたことについて、全国の知事や市長からは結果分析や橋下の引退表明への受け止めなどさまざまな声があがった[19]。
橋下とともに「道州制推進知事・指定都市市長連合」の共同代表を務めている宮城県の村井嘉浩知事は「大阪都が軌道に乗ることがあれば、道州制に弾みがつくことは十分あると思っていた。道州制への影響は間違いなく出る」と語った。
新潟県の泉田裕彦知事は、住民投票の結果について「自治体の形を直接住民に問う今までにない機会だった」と意義を評価。自身が過去に県・市合併を視野に入れた「新潟州構想」を提唱した経緯を踏まえ、二重行政の課題は今後も残るとした上で「大阪都という形にこだわった結果、心配した層が反対したのでは」と分析した。
愛知県の大村秀章知事も否決の結果について「大阪市役所をなくすことまでは市民が躊躇(ちゅうちょ)したのだろう」との見方を示した。自身が掲げる県と名古屋市を一体化する「中京都構想」への影響については「(大阪と)考えが全く一緒というわけではない。愛知と名古屋にふさわしい方向を今後も議論する」と語った。
和歌山県の仁坂吉伸知事は「大阪市のあり方が議論され、より活性化されることは関西や和歌山のためには良いことだ」と述べた。神戸市の久元喜造市長は「大阪市民が市の存続を願った結果で、二重行政の問題に引き続き向き合うことになる」と語った。
大阪都構想をめぐり、橋下氏と対立した堺市の竹山修身市長は「改革を一気呵成(かせい)にやろうと急ぎすぎた。しっかり検証していないのでは」と指摘。一方で「改革意欲は素晴らしかった。そのマインドは堺市でも生かしていきたい」とも語った。同様に反維新の八尾市の田中誠太市長は「今回の議論が無駄とならないよう、改めて大阪府が広域自治体としてどのような役割を果たすのか、府と協議していきたい」とコメント。反維新団体には属さないものの、都構想には反対の立場の吹田市の後藤圭二市長は「大阪市民が市の自治を守る必要性を冷静に判断した」と表明した。
東京都の舛添要一知事は「住民の生活や町が良くなる方向に首長が努力すればいい話。都は制度いじりをしている暇はない」と指摘した。
選挙特別番組[編集]
いずれも投票日当日(2015年5月17日)の放送。
テレビ[編集]
- 地上波
- BS
ラジオ[編集]
- ラジオ大阪では、『水谷ひろしのOSAKA歌謡ウェ〜ブ』放送中の20:00から2分間、投票関連のニュースを放送。その後、24:00から1時間『特別番組 大阪都構想住民投票結果判明』を放送。
- MBSラジオでは、25:00から5分間『大阪市住民投票開票結果』として、開票結果を放送。ABCラジオでは、25:30から5分間『ABCニュース』を特別に編成し、開票結果を放送。なおMBSは25:00に、ABCは25:30にそれぞれ放送休止に入るがこの日のみ、放送時間を5分延長した。
外部リンク[編集]
- 反対派
- 賛成派