レトルトボンカレー(Bon Curry)は、大塚食品が発売するレトルトカレーの商品名で、同社の登録商標(日本第961090号)である。日本初のレトルト食品。甘口、中辛、辛口の三種類がある。現在の主流はフルーツベースのボンカレーゴールド21、温色で描かれた同心円のパッケージで知られる。
商品名の由来はフランス語の形容詞 "bon" からきていて、「良い(優れた)、おいしい」という意味である。
一人暮らしの男性(独身)でも温めるだけで簡単に食べられることから「チョンガーカレー」という案もあった[1]。
歴史・概要 [編集]
ボンカレーを発売するきっかけとなったのは、会社にあった不良在庫のカレー粉をなくすためだったといわれている。大塚化学での約2年の研究開発期間を経て、1968年(昭和43年)2月に、大塚食品工業[2]より世界初の一般向けの市販レトルト食品として発売された。当初は阪神地区限定発売とされた。当時のレトルトパウチ(高圧釜レトルトで高温加熱殺菌する為に食品を封入する袋)は、透明な合成樹脂のみによる2層の積層加工であったが、これは強度に問題があり、輸送中に穴が空くなどの事故が多発した。このため内側のポリプロピレンと外側のポリエステル間にアルミ箔を挟んだパウチに改良して強度を増した。同時に、空気遮断機能が向上し、光も遮断するようになったため、賞味期限が3ヶ月から2年に延びた。翌1969年(昭和44年)4月には、この改良版パウチで全国発売された。テレビCMにはパッケージのモデルである女優の松山容子と俳優の品川隆二を起用した。
ボンカレー発売当時の宣伝は「3分温めるだけですぐ食べられる」という内容のものであった。宣伝からも分かるように、保存性よりも簡便性を前面に打ち出しており、インスタント食品の一種として普及していった。また松山容子パッケージのもので味は野菜ベースであった。当時、営業マンが全国各地に、ホーロー看板を自ら貼りにまわって普及に努めた。
1973年(昭和48年)、毎日放送が制作し全国ネットで放送されたバラエティ番組『ヤングおー!おー!』の司会で人気者になった落語家の笑福亭仁鶴が出演したテレビCMは、当時流行した時代劇『子連れ狼』のパロディで大ヒットした。仁鶴が『子連れ狼』の主人公・拝一刀に扮したCMで、仁鶴の「3分間待つのだぞ」という台詞と「じっと我慢の子であった」の滝口順平によるナレーションが日本中に多くの関心を集めた。仁鶴のCMは、NHKの大河ドラマ『勝海舟』に因んで、勝海舟に扮した仁鶴が「時勢は待っちゃぁくれないよ。でも3分間待つわさ!」「メリケンにもこいつぁないわさ!」と言ったり、野球選手に扮したバージョン(CMソングは大塚グループ提供のテレビアニメ『巨人の星』のテーマ曲)もあった。
1978年(昭和53年)には、ボンカレーゴールドを発売。ボンカレーと食材の構成を替えたこの商品は、ボンカレーに取って代わり主力製品となる。CMキャラクターには、巨人軍(当時)の王貞治(後に郷ひろみ→田村正和→所ジョージ→松坂慶子→池谷幸雄→ともさかりえ)を起用した。
2001年(平成13年)2月、21世紀に入ったのを記念し、ボンカレーゴールドはボンカレーゴールド21としてリニューアル発売された。
2002年(平成14年)8月までは大塚化学が製造、大塚食品の販売であったが、大塚化学が2002年(平成14年)9月1日に持株会社化して大塚化学ホールディングスとなったのに伴い、食品・飲料事業(オロナミンC事業は除く)は大塚食品に移管された。
2003年(平成15年)に、ボンカレーがリニューアルされる。従来の調理法は沸騰したお湯に袋ごといれ煮立つのを待つもので、電子レンジを使う場合は袋から容器に移し替えて温めなければならなかったが、このリニューアルにより袋のまま電子レンジにいれて調理できるようになった。レトルトパウチの改良によりこれを実現している。CMキャラクターには阿部寛と由紀さおりを起用。これに伴い初代ボンカレー(松山容子パッケージ)の全国発売は中止されたが、沖縄のみで発売する「地域版」として継続された。
2005年(平成17年)に新しいパッケージと味のボンカレークラシック(松坂慶子パッケージ)を発売。クラシックと商品名にあるが復刻版ではなくまったくの新商品である。また2007年(平成19年)5月には「ボンカレー発売40周年記念」として、初代松山版が50万食限定で全国発売された。
2009年(平成21年)2月12日に、電子レンジで温めるボンカレーネオを発売。その1日前にこの商品を記念して、カレー好きの関根勤、黒沢薫及びゴスペラーズを呼んで『ボンカレーネオ誕生祭』が行われた[3]。さらに9月8日には『ボンカレースマイルプロジェクト』がスタート、関根勤がCBO(Chief Boncurry Officer―最高ボンカレー責任者)を務め、2010年3月まで半年にわたり展開された。
発売開始以降、世界中でおよそ20億食が消費されているロングセラー商品である。
競合商品にはハウス食品の「ククレカレー」および「カリー屋カレー」(ククレカレーの廉価版)、エスビー食品の「なっとくのカレー」、江崎グリコの「カレー職人」などがある。
商品ラインナップ [編集]
- 2009年発売。ボンカレー【新】の後継商品。
- ボンカレーシリーズの基幹商品。旧ボンカレーゴールド時代には大辛も存在していた(1980年代末期頃)。ボンカレーとは別に商標登録されている(第1638487号)。
- ボンカレーゴールドシリーズは1978年発売。CMには当時巨人軍の王貞治を起用した[4]。その後、内容量がこれまでの180gから200gへ変更した「ボンカレーゴールド200」を経て2000年に現在の形となり、これに伴い内容量も200gから210gへ変更されている[5]。ちなみに「ボンカレーゴールド200」まではJAS認定食品だった。2008年現在のシリーズ主力商品である。1992年・1993年のCMでは、最後に「お野菜ゴロゴロボンカレーゴールド」というCMソングが流れていた。
- ボンカレー(オリジナル・松山容子パッケージ)(甘口、中辛、辛口)
- 2009年現在、沖縄県のみの限定発売(同県出身者の多い大阪市大正区の一部でも発売している)。沖縄を訪れた本土からの観光客がお土産に買って行くこともよくある。なお、2007年5月28日より、全国にて50万個限定で発売された。
- この「オリジナル版ボンカレー」が、TV番組などで紹介されたこともあり、沖縄以外での一般販売が再開されつつある。楽天市場などのネットショップで購入できる他、大手スーパーの一部(たとえば神戸のダイエー三宮駅前店など)でも販売されるようになっている。
- 内容量は180gと発売当初からほとんど変わっていない。
- なお、オリジナルのボンカレーは発売当初からJAS認定食品として販売されていたが2009年1月製造分よりJAS認定マークが表示されなくなった。
姉妹商品 [編集]
- ハローキティシリーズ
- ママの思いやりプラスカレー<コーン&ビーフ>
- ママの思いやりプラスドリア<カレー><クリームソース>
過去に発売されていた商品 [編集]
- 1971年発売。CMには植木等を起用していた。植木が歌う「この際、カアちゃんと別れよう」がキャッチコピーに。
- 1981年発売。CMには当時歌手の松本伊代を起用。「涙が、出ます」篇や「だってらっきょうが転がっちゃう」篇が有名。
- ボンカレーデラックス(中辛)
- ボンカレージュニア(甘口、辛口)
- 街角レストラン ボンカレービーフ(中辛、辛口)
- 1988年発売。発売1年後にはCMキャラクターにタレントの山瀬まみを起用。CMキャッチコピーは「ボンビー山瀬です」だった。
- 1992年発売。 カルシウムが多く入っているボンカレー。CMキャラクターに松坂慶子を起用。CMソングで、「カルシウムも摂らなきゃボンカレーカルシウム」が最後に流れる。
- ボンカレーGood(グー)(ログハウス、レストラン風、家庭風)
- パッケージに松岡修造と桜井幸子が写真で登場していた異色作。「家庭風」が松岡、「レストラン風」が桜井、「ログハウス」は2人で掲載。CMにも出演していた。
- レトルトパックではなく、白飯とセットで電子レンジ調理で食べられる。CMキャラクターに女優のともさかりえが起用されていたことがある。
- 2003年発売。箱ごと電子レンジで調理可能である点が特長。2009年2月より後継のボンカレーネオにとって代わられた。
- アウトドアシリーズ(森のボンカレー、海のボンカレー、畑のボンカレー)
- ハローキティボンカレー
- 競合商品はS&B「カレーの王子さま(レトルト版)」である。
- 2000年 - 2002年にかけての期間限定でファミリーマートが販売した商品。パッケージは松山容子で、『あまくち』『ちゅうから』『からくち』のほか『げきから』まで登場した。
- 2006年発売。プレミアム系のボンカレーで和服姿の松坂慶子がパッケージにデザインされていた。先述のボンカレー【新】同様、2009年2月に販売を終了した。
その他にも一部地域のみで販売されていた商品も多種。
パロディ商品 [編集]
- テレビ番組『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)のキャラクター・どぜうモン(濱口優)を起用したパロディ商品で、パッケージ・看板・「バカレー」のロゴともにボンカレーにそっくりである。黄色・オレンジ二つのパッケージがあるが味は両方とも「あまくち」。フジテレビが2006年夏に開催したイベント『お台場冒険王2006〜キミが来なくちゃはじまらない!〜』の「東京めちゃイケランド」内のグッズ販売にて実際に販売されていた。
- なんばグランド花月でお土産用に販売されている。松山容子の代わりに末成由美がパッケージを飾っている。
その他 [編集]
- 近年、カレーの本場、インドでもレトルトカレーが普及し始め、夫婦共稼ぎの家庭などで人気を博している。
- 日本赤十字社などで非常用備蓄食糧に使用されている。
- 手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』の作中では、どう作ってもうまいものとして採り上げられており、ブラック・ジャックの特徴ある台詞の一つとされる。ただし、アニメ版ではスポンサーなどの影響にて、そのような台詞は取り除かれてしまった。
- アニメ版アタックNo.1では大塚グループのスポンサーである縁でボンカレーが登場しておりNHKBS2での再放送以外には台詞としてそのまま残されている。
- 大塚食品はかつて『火曜ワイドスペシャル』(フジテレビ系)の提供スポンサーをしていたが、同枠で放送された『ドリフ大爆笑』でのコント(棺桶コントにおいて、ボンカレーをレトルトパックから中身を出して入れた)が原因で、スポンサーから降板した。
- 2001年12月25日の『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のコーナー「ボツネームはなんでしょう おなまX」にて、ボンカレーのほかに候補だった商品名を当てるクイズが行われ「一人カレー」が正解だった(理由:一人でも食べられるお手軽感をストレートに表現した)[6]。
- 2007年にABCテレビ『探偵!ナイトスクープ』において、「37年間一度も開封されなかったボンカレー」という代物が登場した。徳島県にある大塚食品の研究所に持ち込まれ、サンプル採取も行っている。大塚食品曰く、恐らく、世界に現存する最古にして唯一のボンカレーであったという。この依頼の探偵であったカンニング竹山は「漢方薬のような臭いだ」と言っていた為に安全性を考慮し、試食は行われなかった。なお、後に行った検査では一切の雑菌類が発見されなかったことから、ボンカレーのレトルトパッケージは40年近くも条件次第では無菌状態を保てることが証明された。のちにこの発見は、日本テレビ『世界一受けたい授業』においても紹介されている。
- パチンコ必勝ガイド(白夜書房)誌上において「ボンカレー打法」と銘打った攻略法が掲載されたことがある。3分間パチンコ台を休ませてから再び打ち始めるといった、いわゆるオカルト攻略法(機械の仕様上効果はないが、特定の方法で大当たりを促進できるという思い込みや経験則による自己流攻略法の総称)の類であった。「3分待つ=ボンカレー」という繋がりはあるものの、このネーミングに至った理由は不明。
- メタルギアソリッド ピースウォーカーではゲーム内の回復アイテムとして登場し、スネークとミラーが「3分間待つのだぞ」や「じっと我慢の子であった」といったセリフを発言する。
脚注 [編集]
外部リンク [編集]