1/26 朝日新聞
一汁三菜
「和食 日本人の伝統的な食文化」が昨年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。しかし、伝統的な食文化とは何だろう?
「3世代ぐらい前(昭和30年代頃)の一般家庭の食生活を思い浮かべるといい」。こう話すのは、農林水産省の「日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会」会長を務めた和食研究家で静岡文化芸術大学学長、熊倉功夫さん(71)。
◆1人ずつのお膳
和食の基本形とされるのが一汁三菜(ご飯と汁物、おかず、漬物の組み合わせ)。熊倉さんによると、平安時代の食事風景を描いた絵巻物にもあり、「文献に一汁三菜という言葉はないが、平安時代には武家や平民は、銘銘(めいめい)膳(1人ずつのお膳)を持ち、庶民の食事の形態としてあったと考えられる」。
一方、食文化の頂点に立つ、おもてなし料理。室町時代に武家社会で確立した「本膳料理」(一の膳、二の膳、三の膳と順番に膳に載せた料理が提供されるスタイル)は、小さな膳(銘銘膳)に載せる料理の数に限界があるため、膳の数を増やしたと考えられる。江戸時代には「二の膳つき」(二汁五菜)が定着し、食べ切れない料理は持ち帰った。
あり余る料理を提供する本膳料理に対し、「茶の湯」から生まれたのが「懐石」だ。「全部食べ切る」「できたてをその都度、運ぶ」「季節感や祝いの心など言葉にならないメッセージを伝える」などが特徴で、現在の伝統的な和食のルーツとされる。
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